9月号



「マンションは地震に弱い」
矢野克巳著


日経BP社 1800円
(税別)

高層マンションの機能を保てるのは震度4までと聞くとぞっとする。それも新宿住友ビルなど第一線のビル建築を手がけてきた構造家が言うのだからなおさら怖い。本書は東京湾北部でマグネチュード7・3の地震が起きたことをシミュレーションしてはじまる。高層マンションでは一階で震度6弱だった地震が、8階以上で震度7になるなど上層階ほど建物の揺れがひどくなる。高層の住民の避難を妨げるのは、階段・エレベーターなどの共用部分の倒壊と機能停止。地震後は管理会社も被害を被っていることから共用部の補修が遅れ、住民の修繕積立金会計が復旧のカギを握るという。
 そこで四章では「共用部分が明暗を分ける」としてエキスパンションジョイントやALC板などの仕上げ材、扉などの建具、非常階段、塀などの外構や、エレベーター、給排水/防火/電気/ガス設備の構造上の弱点と震災での実例を踏まえながら解説していく。疑問を感じるのは大地震全体の中でマンションではどの程度の被害がどういった設備で起こるのかといった予測データーが本書にはないことである。昨年起こった耐震偽装事件はマンション耐震改修のための足がかりにならず、高額な改修費用のため住民の不安ばかりを煽る結果になっている。既築マンションでも部屋の家具、共用部分への横転防止金具の取りつけからもう一歩踏み出したい現状である。


ルミノシティ/ポロシティ  
スティーブン・ホール著

TOTO出版 2520円

スティーブン・ホールは2001年の「Times」誌で「目と心を同時に充たす建築家」としてアメリカ・ナンバー1に称された。本書では彼の建築概念である「ルミノシテイ〈光〉」と「ポロシティ〈孔〉」が、光と影の織り成す建築空間に表わされている。作品は93年のヘルシンキ・キアズマ現代美術館からMITのシモンズ・ホールまで、欧米各地で展開される建築作品は、非対象的な曲線やレーザーで切り抜かれた有孔模様によって特徴づけられ、内側の閉じられた空間に差し込む太陽は、彼のノートに書きつけられた建築詩学に沿って躍動的な光の戯れを演出する。「全ての建築作品は、都市的作品であり、それらは都市の可能性を否定するか追求するかのどちらかである」と語るスティーブン・ホールは、アーバニズムの新たな体験を生み出し続けている。




日本初!個人の庭めぐりガイド
  オープンガーデン・ガイドブック 
2006年〜2008年度全国版

マルモ出版 1600円
(税別)

個人の庭主が一般の人々に庭を開放するオープンガーデンの動きが活発化している。こうした動きはエクステリアリフォームの全国ネットワーク化と共にさらに活発化しそうだ。本書はこうしたオープンガーデンを一挙掲載したはじめての全国版であり、これを読めば誰でも近所のオープンガーデンをたずねていくことができる。


 

「『いい家』が欲しい。」
 松井修三著 

創英社/三省堂書店(発行・発売)1800円(税別)

 

下り坂の21世紀と言われる住宅業界にあってうなぎ昇りの本を聞けば手に取らずにはいられない。『「いい家」が欲しい。』は99年の初版発行から月を追うごとに売行きが伸び、今や30万部に達する大ベストセラーになったという。 本を開いて見ると、著者はバリバリの外断熱工法の推進論者。舌鋒鋭く批判されるのは大手のハウスメーカーばかりではない。グラスウール・自然素材が次々と・・・ああ、業界雑誌も斬られてしまった。まさに業界が総なで斬りにされる警世の書である。本の帯には「もう家を買った人は読まないでください」と書かれているが、ついでに言わせてもらえば「業界の人は読まないでください」と書いていただきたいものである。(しかし、そう書くとかえって読みたくなるので書かない方がいいのかと思ったりもする・・・)
 間違いだらけの住宅業界に爆撃を果たし終えると、筆者はホームページ上の「談話室」への訪問をすすめて歩み去る。その後はホームページ上で反論者たちと熾烈なファイティングが繰り広げられるのかと思いきや、そこには爽やかな読者からの反響の声があふれているのには驚いてしまう。思えば住宅業界では「安心と保証」という文字ばかりが先に立って攻撃的な言論は育ちにくい環境がある。雨降って地固まるというのか、雷雲からのイカヅチも一難去れば甘露ありという読後感は、本当にいい家を求めてやまない著者の懇切丁寧なコンサルテイングのたまものであろう。



弁護士 秋野卓生著

「安心・安全のための住まいづくり」

日本住宅新聞社(発行)
建築技術(発売) 
952円(税別)

重版のヒット作。著者は住宅紛争の専門弁護士。安い・早いにだまされて家を建ててしまった人のために、分かりやすいマンガ入りの語りでやさしく法律問題を解きほぐしていく。住宅業界はある意味で分かりやすい本作りの最前線とも言えるだろう。工務店専門の新聞社から発行された本書は、マンガと分かりやすい語りを駆使して、六法全書を開いたことのない読者にいかにポイントを伝えていけばいいのかを心得ている。工務店からエンドユーザーまで「安い・早い家づくり」からの脱却をやさしく提言する。


防犯住宅

日経BP社 1785円
(税込)

 今年4月から住宅性能表示制度にも加わった防犯性能。防犯カメラや指紋認証ドアロックなどのセキュリティ用品や電話やテレビと連動したユピキタスシステムなど高性能の防犯建物部品が続々と発売される中で、戸建・リフォームに携わるプロにとって防犯性能の高い家づくりのノウハウは必須とものとなりつつある。本書は防犯備品の基本から防犯診断、さらには防犯リフォーム営業の秘訣まで、需要の高まる防犯リフォームのハウツーをイラスト入りでポイント解説。ポケットサイズのB6版住宅現場手帳シリーズ。「耐震診断」「基礎工事」も同シリーズで発売中。 

7月号



木造住宅積算見積もりの手法

はまだかんじ著

経済調査会 2857円
(税別)

 設計の見積りは、部材の種類やサイズによって価格が異なるために大変な労力と時間がかかる。かといって見積りに手を抜くと実際の価格が食い違ってトラブルになりかねない。時間はほどほどに大体の見積もりを出す「どんぶり勘定」が昔から重んじられてきた。はまだかんじ氏は、誤差の少ないどんぶり勘定の第一人者。住まいの間取りをラッキーパズルに見立てて計算する「はまだ式見積もり法」は、屋根などの複雑な勾配係数を用いなければならない見積もりもラクラク計算。それでも誤差はわずか+−3%以内で抑えられる。丹念なデーター収集に基づいて考案された手法に業界での信用も篤く、全国各地での講演も手がけている。デジタル世代には軽視されがちな「かんぴゅーたー」の手法をぜひ体得したい。




迷ったら、読んでください! 
住まいづくり第三の選択


宮沢俊哉

現代書林 1450円
(税別)

 タイトルに「迷ったら、読んでください!」とある通り、本書は家作りに困った人の相談所である。著者は15歳から大工修行で叩き上げてきた家作りの達人。ひとつひとつの事例にも自身の体験による血のにじむような失敗談が語られている。18歳ではじめて新築住宅を建てた時の喜びから、2400社の導入に成功した住宅システムの創設まで、住宅業界を一途に突っ走ってきた著者の苦心の体験記が語られている。 「俺ならこうしてきた。そうだ、それでいい」そんな声が聞こえてきそうな一冊である。
 
耐震偽装事件によって住まいへの不信感が募る今日においても、その確固としてゆるぎない信念は、安全と快適の住まいを苦心して提供し続けてきた氏の事業に対する一貫した誠実さを物語っている。こうした一人の家作り職人の苦心談があるからこそ、後半の以下の章が生きてくる。「土地から探して戸建てマイホーム「相談相手選びでこんなに違う」「意外と知られていないプランニングの大事なポイント」「家づくりは出会いから契約までで90%が決まる」「建てた後のことも建てる前に考える」。これらは一生に一度の購入品であり、ライフプランの基礎ともなる住宅にとりつかれた人々への頼もしい助言集である。ユーザーへの新しい情報提供の形が求められている今日において、作り手が伝えたい情報とユーザーの関心にどれほどの隔たりがあるのか?そんな疑問に、氏は自らの思いの丈を惜しみなくぶつけており、ユーザーへのメッセージとは渾身の情熱にほかならないことを物語る。初めて住宅を購入するユーザーから家作りのプロにまで実に読ませてくれる一冊である。

 




ヨーロッパの町と村
そのデザイン・アニメティ・プランニング 

井上裕・浩子 写真・文

グラフィック社 3800円(税別)

本棚に置かれた写真集は、見る人を今いる現実とは違った世界に誘い込んでくれる。写真集でヨーロッパの住まいの旅というのも魅力的だし、写真が見たいところを写してくれていればなおさらいい。その点で、建築士で工学博士の夫、写真・翻訳・執筆と多彩な顔を持つ妻の二人が織り成すこの写真集は、住まいに関心の深い鑑賞者向けに注意が行き届いている。
 およそ800点におよぶオールカラー写真は、ヨーロッパの都市と村の町並みや住宅のさまざまな意匠に迫っていく。町並みや景観の全景だけではなく、木の梁や彫刻、民家のドアのアーチの構造にも目を配ってくれるところが嬉しい。
 さらにヨーロッパ各国の歴史的な建物や町並みを保存する施策の現状が各章末に配されている。ヨーロッパでは全ての建物の新築・改築・保存に公的な介入が義務付けられおり、そのプランニング申請と許可についての解説も資料的価値が高い。
 取材地は南欧・北欧・東欧を含んだヨーロッパ全域にわたっている。ボスニア・ヘルツェゴビナの険しい岸壁から噴出する川のそばに建てられたイスラム修道院、デンマークの珍しい茅葺き屋根の家に開かれたドマー窓とその前に置かれた水仙など、通常のヨーロッパ旅行ではなかなか目にすることのできないものも多い。
 本書の特徴は、その写真の見やすさにあるといえよう。一人の写真家の作品を鑑賞するのは、なかなか気力を要するものだが、このように屈託なくヨーロッパの景観を楽しめるのは、数十年にわたる夫婦二人三脚での調査旅行のよる成果が大きいのではないだろうか。これで価格が3000円代に抑えてあるのはお手ごろと言える





家を建てるならドラえもんに聞け家族の夢をかなえる住宅革命          

石原宏明

PHP研究所 1500円
(税別)

 この新刊書を見たのは、会社のヒロセ君の机の上だった。そのいかにも手に取りたくようなタイトルと、のんきなヒロセ君の顔を見比べながらページを開いてみたのだが、これは中々あなどれない本であることが分かった。
 著者は岡山を拠点に活動する経営コンサルタント&建築士。全国170の工務店が参加するサポートシステムをまとめながら、新しい住まいの提案や企業再建のサポートを行っているが、どうしてドラえもん的空想に至ってしまったのだろうか。
 ドラえもんのビックライトがあれば、大きい家に住めるというアイディアや、古来より日本はドラえもん民族ではなかったのかという途方もない疑問は、既成のカテゴリーを無視した錬金術的空想とも言える。だが、その空想の末に一つ一つの住宅の設計プランや、生活の工夫のアイディアが浮び、一つ一つの章は余韻を残して閉じられる。それは個々のユニークな住宅設計やアイディアというものが、設計者の押し付けや独善的判断から生まれてくるのではなく、住宅を購入してくれる施主との長い付き合いの中で生まれてくることを表している。つまり新しい住まい作りは、毎日の暮しの中でちょっとした工夫をしたい施主の思いを工務店が聞き入れて、その夢をかなえていく心の交流によって生まれる夢のプランである。中二階に家族のための「心の思い出ポケット」をつくろうという提案の背後には、一生活者として施主と歩みを共にする著者の姿がみえてくる。 読みながら気になっていたのは、ドラえもんの著作権。こうした出版では権利上、イラストの使用が難しいが、それを払拭して笑わせてくれたのが、全国の工務店の仲間によるドラえもんの扮装である。屈託のない文章と苦心の絵作りがもたらす読後感は壮快だ。



ゆりかごからゆりかごへ入門―世界を新しくするものづくり

 岡田慶子・山崎正人著

日本経済新聞社 1,365円(税込)

「ゆりかごからゆりかごへ」(Cradle to Cradle)は、アメリカの建築家ウイリアム・マグダナーとドイツの科学者マイケル・ブラウンガートが提唱する新しいものづくりのための概念である。原料から製品を作り、そのまま廃棄するのではなく、再び原料へと戻して製品を作り上げる。単なる使い捨てではなく、持続可能な物作りへの挑戦である。今回日本版として出版された「ゆりかごからゆりかごへ入門―世界を新しくするものづくり」は英語版Cradle to Cradle」のコンセプトを分かりやすく紹介した入門書である
 
著者マイケル・ブラウンガード氏は、サステイナブル・ビジネス・フォーラムの主催で来日。5月26日に赤坂で記念講演を行った。基調公演は、「CトゥーC」(Cradle to Cradleの略)の考えに基づいて作られたじゅうたんや椅子や衣類などを参加者に渡しながら行われた。一つ一つ手で触れて感じるフォーラムである。
 
この「CトゥーC」の概念は、従来のリサイクルとは異なる。リサイクルは、既成の製品や原料をどのように再利用するかということであった。しかし「CトゥーC」では最初のデザインを重視する。製品の設計段階から、次の新しい製品の設計を踏まえた上で設計する。つまり「ゆりかご」の設計段階から次のゆりかごのことについて考えながら作るわけであり、その点が使用済みの材料の再利用を中心に考えるリサイクルとは異なる。
 
また「CトゥーC」は、リサイクルのようなダウンサイクルではなくアップサイクルであるという。講演の中でブラウンガード氏は、その例としてポリプロビレン紙で作られた英語版「ゆりかごからゆりかごへ」を手渡した。
 
ポリプロビレン紙はリサイクル可能なプラスチック原料で作られており、現在ドイツの新聞紙の新しい原料として注目を集めている。これは従来の紙リサイクルとは異なる。再生紙リサイクルは以前の紙よりも色がついたりして品質の落ちる「ダウンサイクル」であるが、ポリプロビレン紙はリサイクルをしても品質はもとのままで、原料よりも品質の向上する「アップサイクル」であるという。「CトゥーC」はこうした設計デザイン・品質向上を重視して産業の発展に前向きな考え方である。
 
「CトゥーC」は今や世界各地で現実化しつつある。シカゴ市庁舎ではこうした設計プランに基づいたプランを実施。ヨーロッパ・中南米の各都市でも「CトゥーC」に基づいた街づくりを進めている。


「建築携帯ブック 防水工事」

社団法人建築協会施工部会
(編)

井上書院

本体1,700円(税別)

建築現場技術者におすすめの「建築携帯ブック」好評の第七弾。コストダウンや工期短縮をはじめとする防水工事の合理化の中で、多様化してきたクレーム問題に対応。水溜りや防水層の亀裂・破断・膨れ・変形・パラペットの異常など、よく起きる43のクレームの事例を取り上げている。これらの防水クレームの現象例・工法別にまとめ、防水クレームの発生原因と処理方法をカラー写真・図表を使って解説するだけでなく、再発防止対策として、設計から施工・維持管理に関わる正しい品質管理のポイントをまとめている。また巻末ページにはクラック等の計測に役立つ目盛りを付している。常に携帯しながら日常業務でも活用できるハンドブック。その他、「配筋」「設備工事」「安全管理」「クレーム」「建物診断」「左官」も発売中。


後悔しないためのリフォーム

30年の経験からみた専門家による事例集

碇(いかり)きく江

文芸館

本体2,200円(税別)

本書は、戦後60年のリフォーム史をもとに、新時代の住宅の新設計を提案している。リフォームが増築・改築と呼ばれていた時代からの作例が図解集成されているリフォーム戦後史である。オイルショックから女性の社会進出まで1950年代から90年代までの住まい作りには、それぞれの時代の動向を反映した意匠が豊かに盛り込まれている。
 
著者は副題の通りリフォームを30年にわたって手がけてきたベテラン女性建築士。福祉住環境コーディネーターとしての資格もあり、重度身体障害・老人性痴呆などの病状に合わせた住宅の改修を行っている。
 
本論の「ミレニアム住宅と高齢者・障害者の住まい作り2000〜2004年」には、こうした見地から踏み込んだ改修例とその問題点が記されている。介護保険がスタートし、住宅改修費による助成金が認められた現在、それに対応した高齢者向け住宅のための基本設計を紹介。特に痴呆症をはじめとした認知症の住宅着工については、症例別の改修例が豊富に盛り込まれており、著者の住まい作りにおけるノウハウをうかがい知ることができる。章末にはオーストラリアのヘルスケアについても紹介されている。オーストラリアのナーシングホームと子ども病院の内装やデザインは、クラシックでモダンな落ち着きや心はなやぐ快適さを重視している。日本における病院や介護のどこか無機質な「施設」のデザインの枠組みを超越している。オーストラリア編は短期研修の記録を基にした短い紹介なのが残念であり、次回作に期待したい。


アルミニウムの空間

石田保夫・飯嶋俊比古・畔柳昭雄(編)新建築社

本体3,200円(税別)

本書は、日本初のアルミ建築の集大成書であり、一般住宅でのアルミの使用例が豊富な作例とオールカラー写真で盛り込まれている。軸組系構法やパネル系構法を用いたアルミの家作りには、今まで見たことのない新しい質感の発見がある。さらには茶室や蚊帳までもアルミにしてしまうインテリアの作例と技術までが網羅されており、アルミという硬質で清涼感のただよう建材が温暖湿潤な日本の気候に合うことに爽快な読後感が漂う。



建築現場実用語辞典 
(改訂版)

建築慣用語研究会(編)

井上書院

本体3,400円(税別)

 88年の発行以来、ロングセラーとなった辞典の大改訂版。現在の建築現場で使われている実用語を中心に5200余語と理解に役立つカラー図版640点を収録。発売から18年が経過したため、新技術・新工法の他に、環境・福祉の方面の語彙を充実させ、紙面をオールカラーにした大改訂版。


新刊書案内 2006 上半期
(※このコーナーは「住宅ジャーナル」掲載中の新刊書コーナーからの抜粋です)   建築・デザインおすすめの100冊