
金賞受賞 能代の住宅 納谷建築設計事務所
「第27回INAXデザインコンテスト」受賞作品決定
INAXは、『第27回t NAXデザインコンテスト』の受賞作品を決定。コンテストは、一次審査会(非公開)で選ばれた上位賞候補6作品の受賞者が、審査委員や各賞受賞者、報道関係者の前で受賞作品のプレゼンテーションを行い、その場の審議で「金賞」1作品、「銀賞」2作品、「銅賞」3作品を決定した。金賞は賞金100万円。銀賞は30万円。
なお、今回の受賞作品を掲載した「第27回INAXデザインコンテスト優秀作品集」は、2007年4月に刊行予定。
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INAXホームページ
金賞受賞者名:納谷建築設計事務所 納谷学・納谷新
一設計主旨
能代市は秋田県の北西部に位置し、日本海に面した地方都市である。海からは日本海特有の強い風が吹き付けるため、海岸線沿いでは江戸時代に植林された松の砂防林が、強い風と砂から街を護っている。しかし、風の強さは今も変わらない。夏は心地良いが、冬は体感気温の低い日々が続く。従って、この街では壁の断熱性能を上げるため開口部を小さくしている住宅が多く、冬は日射量が少ないため必然的に室内は暗くなりがちで、開放的で明るい住宅の実現は難しい。このような気候条件から、クライアントである老夫妻の要望は、「冬でも明るく開放的であること、暖かく風呂に入れること。コンパクトな生活」であった。
この要望を受け、住宅の性能を外壁一枚の断熱性能や設備機器に頼るのではなく、建物全体のプランニングによって解決することを考え、ここではプランを二重化し、外側(室内の外周寄り)と内側(室内の中央)の境界によって、夏と冬の気候をコントロールする計画とした。
まず、1階は防犯と雪の影響を考慮して開口部を極力控え、駐車場の他、使用頻度の少ない和室を配置した。逆に、日常生活のほとんどを2階で過ごせるように、外周全体にペアガラスを回して開放性の高い空間とした。そして、二重化したプランの室内環境を整えるため、2階の外寄りのスペース(廊下)の床をスノコ状にして、上・下層の光と風の道を確保した。
さらに内側の壁は建具を用いた可動式とすることで光と風を調節し、季節や時間帯、使い勝手によって、内側と外側の関係を自在に使い分けられる境界として機能させた。例えば、夏は内側の境界を開放し、外側の壁の領域まで広がりをもたせてスノコの床から風を抜き開放性の高い「夏の家」として使う。一方、冬は内側の境界を閉じて、柔らかい光に溢れたコンパクトで静かな「冬の家」として使う。
また、浴室やトイレはプランの中央に配置することによって、冬の寒さから解放され、しかも内側の境界からの柔らかな光により明るく暖かな浴室が可能となった。老夫妻がこの家で明るいおだやかな生活を営まれることを切に望んでいたが、竣工後1年を経過した今、それが実現しているようだ。
一審査経緯
冬の厳しい北国にあっても、「明るく開放的な家にしたい。特に、冬、暖かく風呂に入りたい」というクライアントの希望を、素晴らしい計画的手法で解決した作品である。第一次審査(非公開)の段階から、審査委員全員がプランからそれを読み取って高く評価していた。
“細かいところまで丁寧に考えられている優れた北国の家”として、早くから上位賞に選出された作品だった。
公開審査では、プレゼンテーションによって実際の暮らし振りが披露され、計画の随所に老夫妻の生活が丁寧に取り込まれている様子が証明されて、さらに好感度が増したようだった。街中に建つため止むを得ず2階建てにしたこと、そして日常生活のはとんどを日当たりの良い2階で過ごし、1階は駐車場と寄り合い等に使う和室だけにしていること、回廊をまわして夏・冬の生活空間を住み分けていることなどによって、この地方に多い高気密・高断熱の住宅とは一線を画した計画になっている。また、夫婦が快適に暮らせるように、LDKと寝室の間に水まわりを挟み込むようなかたちで動線をコンパクトにまとめたり、雪下ろしをしなくても済む屋堀にしたり、漬け物を漬ける場所があったり、と至る所にきめ細かい配慮がなされている。厳しい冬の暮らしぶりや、暖かくお風呂を楽しんでいる様子、スノコの回廊が光や風ばかりではなく声をも通してお互いの気配を感じて安心できることが、実際に暮らしていく中で分かったことなども紹介され、日常の生活に対する優しく温かい視点に皆、心を動かされた。
その一方で「良く考えられた椅麗なプランだけに、大きな収納は屋外にあること、2階のキッチンでのサービスやゴミの問題などが多少気になる」「エレベーターや階段の位置やスペースは問題ないか」という質問も出た。しかし、老夫妻は特に不自由なく新しい暮らしを楽しんでいる様子が報告され、「決してファーストクラス用ではなく、エコノミークラスの生活に対する細かい配慮がとても良い。6作品の中では一番生活派という感じがする」と審査委員の1人は絶賛した。第一次審査から公開審査まで、一貫して“手堅い秀逸な作品”という印象を強く与え、最終的には金賞に決定した。